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福岡有明のりが美味しい理由【第1回】

【 第一回 】
福岡有明海漁業協同組合連合会
西田 裕一さん

有明海の干満の差が生み出す
独特の柔らかさと口溶けの良さ

果てしなく拡がる広大な『福岡有明のり』の養殖場へノリ漁師の船が出て行く(柳川市)

福岡県南部、大川市・柳川市・みやま市・大牟田市の4市が面している有明海は、国内屈指のノリ養殖が盛んな海。その広さは約171平方キロメートル(福岡市のおよそ半分!)。年間の生産数は約13億枚で、売上高は約150億円※。福岡県は全国2位※の生産量を誇り、佐賀県や熊本県を含む有明海全体で見ると、国内で生産されるノリのおよそ半分がここで生産されているのだそうです。今回は、そんな日本一の海苔の産地である有明海で獲れる『福岡有明のり』について教えていただくために、柳川市にある福岡有明海漁業協同組合連合会の西田裕一さんを訪ねました。(※数字は令和3年度現在)

「福岡県は日本でも有数のノリ生産地であることをもっと知ってほしいです」と西田裕一さん

『福岡有明のり』の最大の特長は、柔らかく、口溶けの良い、おいしい海苔だということです。食べるとパリッと歯切れがよく、口の中で海苔がすぐに解れるので、海苔本来の風味や美味しさを感じ取れやすいのです。

海苔には大きく分けて、有明海で作られているノリのように口溶けの良いノリと、逆に溶けにくく巻き寿司などに適したしっかりとしたノリの2つがあります。その違いはノリの育て方の違いによるもの。常に海中に浸かった状態でノリを育てる『浮き流し式』では、厚みのあるしっかりとしたノリが。一方、柔らかいノリは、干満の差を利用してノリを一定時間、海上にさらすことができる『支柱式(しちゅうしき)』という方法で生まれる特性といいます。有明海ではこの『支柱式』が採用されています。

ノリの成長が進んだ11月下旬から収穫開始。箱型の船に乗ってノリを摘んでいく

有明海では、最大で6mという干満の差をいかして『支柱式』という方法でノリを養殖しています。『支柱式』は、海に立てた柱にノリ網を吊るして高さを固定し、潮が満ちるとノリ網は海中に浸かり、逆に潮が引くと海面が下がるので網は空気中にさらされます。このことを『干出(かんしゅつ)』といいます。有明海のノリは河川から海に流れ出る豊富な栄養を得ながら成長します。さらに干出を行うことで病害からノリを守るとともに、常に海中で育つノリよりもゆっくり成長するので、結果的に細胞壁の薄い柔らかいノリができるのだといいます。

潮が引いてノリ網が海上に出る『干出』の様子。ノリの病害を防ぎ、口溶けの良いノリに仕上がる

潮の干満による海面の高さの変化は日によって変わります。ノリ網の高さもその都度調整しなければなりません。漁連では有明海の干潮・満潮の時刻と潮高(海水面の高さ)を記したカレンダーを作って作業の目安にしてもらっています。

ノリ網を干出できる時間は支柱に吊るすノリ網の高さとその日の潮高で決まります。しかも干出時間のとり過ぎはノリのおいしさにも影響します。網を吊るす高さはノリ漁師さんたちの経験にもとづいて調整されます。

福岡有明海漁連が毎年つくる『おいしいのりづくりカレンダー』。ノリ漁解禁は10月から

ノリ漁が解禁されるのは毎年10月中旬頃。私たちが訪問した6月は、まだ有明海には一本の支柱も立っていませんでした。

「今は『糸状体(しじょうたい)』と呼ばれるノリの種を培養している時期になります。牡蠣殻に付着した糸状体は殻の中に潜り込み、牡蠣殻は徐々に糸状体で覆われ、真っ白だった殻も真っ黒になってしまいます」

福岡県水産海洋技術センター 有明海研究所の中で培養されている糸状体を見せていただきました。白い牡蠣殻に糸状体が住み着くと徐々に黒い斑点が増えていっている様子がわかります。

牡蠣殻に付着してゆっくり成長していくノリの種『糸状体』の様子(右の殻)

10月中旬。ノリ漁解禁の前日になると、培養した牡蠣殻を網にくくりつける『殻入れ』の作業を一家総出で行う風景を町のあちらこちらで見ることができるそうです。その様子はまた次の機会にお伝えしますのでお楽しみに!西田さん、今日はありがとうございました。

福岡県水産海洋技術センター 有明海研究所で培養中の『糸状体』の様子を説明してくれた西田さん

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