ふくおかの水産加工場を訪ねて
魚の旨さを知り尽くした水産のプロたちの加工現場をリポート!
第 8 回 糸島かき 徳栄丸
森が育む糸島のカキ
一粒も無駄にしない思いを缶に詰めて…
毎年2000 トン近くの養殖カキが生産されている福岡県。カキの養殖は1980 年代に豊前海沿岸からはじまり、近年では糸島地域の生産量が目覚ましく伸びてきています。今回はそんな糸島の中でもカキ小屋目あてに多くの観光客が訪れる糸島市の岐志漁港を訪ねました。2019 年にリニューアルしたばかりの真新しい店舗型のカキ小屋が並び、炭火に焼かれた牡蠣の芳ばしい香りが漂ってきます。取材にご協力いただいたのは徳栄丸の松前龍吉さん・松前美月さん他スタッフの皆さん。さっそく漁港に面した引津湾に浮かぶカキ養殖の筏(イカダ)まで船に乗せていただきました。
引津湾は糸島半島西岸にある波穏やかな入江で、養殖筏が100 基近く浮かんでいます。筏は丸太を格子に組んだもので漁師さんたちは慣れた足どりで、ひょいひょいと丸太の上を歩いていきます。この丸太の下は水深約7m。カキの稚貝を着けたホタテの殻が吊り下げられ、ここでカキたちはすくすく成長します。
湾には森から流れ込む栄養のおかげでカキの餌となる植物プランクトンが豊富で、しかも波穏やかで海中の揺れも少ないので、カキにとってはこの上なく最適な発育環境なのだそうです。徳栄丸ではこうしたカキの成長に大きな役割を担う森の環境保護にも取り組んでいるといいます。
水揚げしたカキはサイズを選り分け、小さいものはカゴに入れて再び海中に戻して成長を促します。中身が大きなカキの見分け方は、ずっしりと重みがあり、貝殻が舟底のように膨らんでいるのが目安。こうして選ばれたカキは殻についた付着物をきれいに除去し、紫外線で殺菌された海水に丸1 日浸けます。するとカキは自ら体内の雑菌や不純物を吐き出してくれるのだそうです。
徳栄丸はカキ小屋の他、食べごろに育ったカキを冷凍保存して全国発送も行なっています。とくに人気は缶の中でカキを蒸し焼きにする『ガンガン焼き』。缶のままコンロの上で加熱するだけで簡単にカキ小屋気分が味わえるヒット商品です。カキ小屋のシーズンは3 月までですが、実は終盤の3、4 月になってもカキは益々大きく美味しく育っているのだそうです。そんなカキたちをシーズンが過ぎても1粒たりとも無駄にできないとの思いで「つくる責任、つかう責任」そして「命をいただく」という思いも一緒にこの缶に込めていらっしゃいます。
カキ飯、カキ汁、カキのパスタやポタージュなどサイドメニューも充実のカキ小屋。
牡蠣のガンガン焼き(3500 円)、無添加自家製干物の詰め合わせ(3780 円)など全国発送のお取り寄せも人気だ。
●徳栄丸
[住所]糸島市志摩岐志778-6
[電話]090-4355-5634
[期間]※カキ小屋は3 月まで。お取り寄せは年中無休
[HP]https://www.tokueimaru.com/